No.10

耳飾り


ズオくんが遠い未来の涯で、過去の縁者によく似た人々に囲まれて過ごすif世界線

先生の耳には、いつも綺麗な飾りが揺れている。

右耳は獣が巻き付いている形状の、かなり古いもの。
そして左耳は……それと似ているようで違っていた。

「……先生」
「何ですか?」
「先生の耳飾り……左右で少し、違いますよね」

そう尋ねれば、仮面の向こうの眼が瞬く。

「ええ。こちらは……かつて家族だった方々から贈られたものです」
「では……左は……?」
「……親友(・・)です」

普段の淡々とした声とは違う、感情がいつも以上に溢れた先生の声。
十何年もずっと一緒に居る僕も、初めて聞く。
……それほどに先生に大切にされている親友(・・)に、モヤモヤしたものを抱いた。

「………」
「小禾?」
「……そんなに、大事なんですか?」

モヤモヤした感情を先生にぶつけてしまった。
良くないことだとわかっているのに。

「ごめんなさい。先生」
「……小禾」
「……この感情をどうすればいいのか、わからなくて」

「親友」からの……先生の左側の耳飾りには、何個かの石も嵌め込まれている。
実習時に見せられた不活性化源石と、よく似た輝きだった。

アクナ,未来の涯、過去の面影,